株式会社スピンラボ:一発逆転のチャンスがある「示唆質問」と「解決質問」

営業はぐっと堪えて話をしてはいけない。顧客に語ってもらう。

雑誌掲載記事

第5回「一発逆転のチャンスがある「示唆質問」と「解決質問」」

問題質問をした結果、顧客の口から出て来る言葉は潜在ニ−ズを語っている。困っている問題を認識したレベルのニ−ズであるため、この発言がすぐ購入行為には結びつかない。そこで示唆質問と解決質問が重要になる。

感じている問題点よりも対価の方が大きい場合、顧客は買わない。逆に問題の大きさの方がはるかに対価を上回る場合、顧客は買う行動をとる。示唆質問(Implication Questions)と解決質問(Need-Payoff Questions)は、このように抱えている問題をさらに強く、大きく顧客に認識してもらう効果を持っている。換言すれば潜在ニ−ズを顕在ニ−ズに膨らますのが、この2つの質問である。

潜在ニーズの影響を確認する示唆質問

示唆質問とは、買い手が発言した問題点(潜在ニ−ズ)が、今後他の問題や他者、他部門に与えるインパクトを確認するための質問である。標準パタ−ンは「…が問題とおっしゃいましたが、それは…に影響を与えませんか」の形となる。 「風が吹くと桶屋が儲かる」という小話があるが、示唆質問はこれと全く同じで、連想ゲ−ムのようなものだ。例えば、ある工場を訪問した際に顧客が「この機械は、調整がやっかいなんだ」と何気なく発言した。ポイントは何気なくだ。そこでの示唆質問を並べてみる。

(1)その問題は不良率に影響を与えませんか
(2)不良率が高くなると工場の生産性はどうなるでしょうか
(3)外注管理に悪い影響がでてきませんか
(4)製品コストへの跳ね返りはどうでしょうか
(5)製品の競争力が低下しませんか
(6)売り上げはどうなりますか

まるで会社のすべての問題点が「機械の調整がやっかいだ」が原因であるがごとく感じてしまう。 このように顧客が何気なく発言した潜在ニ−ズは、示唆質問を売り手から聞かれ、それに答えていくプロセスで急激に顕在ニ−ズに膨らんでいく。この問題を放置しておくと将来大変な問題点に発展してしまうと顧客は認識する。しかし、示唆質問は使うのが難しいと言われている。顧客が発言した問題点をベ−スに示唆質問をするには、売り手は顧客の仕事の流れや手順が理解できていなければならない。
そのための注意事項は

(1)顧客の経営方針や経営課題を理解し、それらに関連させて示唆質問をすること
(2)顧客の仕事の流れや部署間の関連性を知っておくこと
(3)どんなベテラン営業でもアドリブでは示唆質問は出て来ないので、事前に自分の得意なパタ−ンを頭に入れておくこと

である。

示唆質問上達のポイント

示唆質問を考え出すには二つの方法がある。一つは、客先が発言した問題点を掘り下げる方法だ。例えば「私が使っているパソコンは古いんですよ」の問題発言に対しての示唆質問は「処理スピ−ドが遅くイライラしませんか」「新しいソフトを使いたい時に問題はありませんか」「仕事の能率に対してはどうですか」「仕事の能率に問題があると、あなたの評価に影響はありませんか」「それはあなたの今後の昇進、昇給に関連しませんか」などである。

もう一つの方法は、他者や他部門にどんなインパクトを与えるかを連想する質問だ。例えば「うちのシステムは良く故障するんですよ」といった顧客の発言に対して「システムが止った時、営業の皆さんの仕事にはどんな影響がありますか」「それが月末だったりすると、経理部では決算処理に大きな支障をきたしませんか」「お客様に対する請求が遅れ、お客様に迷惑をおかけしませんか」と聞く。このように示唆質問はさまざまなパタ−ンが考えられるので、何種類かを頭に入れておかないと面談時にスム−ズに出てこない。 示唆質問は商談の大型化に大きく影響をあたえる。
筆者も実際の商談で試してみたが、金額のケタが一つ多くなると言っても過言でない。明らかに不利な状況だと分かっている商談において、ダメモトで示唆質問を使ってみると一発大逆転の可能性がある。顧客は何らかの理由で競合相手(例えばA社)にほぼ決めようとしている時、この示唆質問を幾つか受けると不安感が募ってくるからだ。
「A社の営業と検討を進めてきたが、今まで全く考慮しなかった点をあなたからいくつか指摘された。A社に決めたとすれば後になって落とし穴に気づくかもしれない」ということである。

改善ポイントを聞く解決質問

ニ−ズ顕在化を促すもう一つの質問が解決質問だ。顧客が示唆質問に答えた結果、強く認識した問題を一刻も早く改善したい気持ちに変化させる効果を持つ。質問内容は示唆質問の時のネタをそのまま使う。示唆質問は他に与える悪いインパクトに焦点があたっているが、解決質問は良くなる(改善される)前向きなポイントに焦点をあてる。具体的な内容を以下にまとめる。

●「…の問題点」が解決できたとすると、他にどんな良い影響が考えられますか
●XXの使いにくいという問題が解決できますと生産性は向上するでしょうか
●その結果納期遅れは大幅に改善できますか

このように解決質問は楽しい前向きな話題となるので、顧客は積極的で前向きな気分になる。示唆質問のまま終わらず必ず解決質問を使い、顧客が前向きで積極的な気持ちになったところで商談を締めくくるのが良い。 解決質問のタイミングは、問題質問や示唆質問の後。
つまり売り手にとっては問題質問と示唆質問の結果で顧客が抱えている問題点を理解し、解決質問に対する顧客の答えが見えている状況にある。内容は世のコンサルタントが話すような改善ポイントとその利益の羅列となる。売り手にとってこれを説明することほどカッコイイものはない。
だから話したい。しかし、営業はぐっと堪えてしゃべってはいけない。顧客に語ってもらうことだ。 これでSPINの中核である四つの質問のそれぞれが持つ意味合いと効果、注意事項はおおむね理解していただけたと思う。次回は売り手が販売したい商品やシステムの説明の仕方を紹介する。

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