株式会社スピンラボ:利益説明の数値化が成否の分かれ目に

最終提案の前は自分の前で説明させる模擬演習が効果的。

雑誌掲載記事

第6回「利益説明の数値化が成否の分かれ目に」

今回の商品説明の段階で初めて売り手は存分にしゃべれる場が与えられる。「長らくお待たせしました。さあ、あなたの番です」。だが説明する内容には十分に注意をしないといけない。

SPIN登場以前、説明のポイントで大事なのは特徴と利益といわれていた。ハスウェイト社がこれらと商談成功との関連性を調べた結果、特徴の説明は商談成功とはほとんど相関関係がなく、利益の説明が商談の成否に大きな影響を与えていることが判明した。

さらに利益を詳細に分析した結果、それまでの利益は二つのタイプに分類できることが判明した。

■タイプA:製品またはサ−ビスの使い方を説明し、どう役に立つかを示す
■タイプB:製品またはサ−ビスが、顧客の顕在ニ−ズをどう満たすかを示す

一見同じように見えるが、顧客に与える効果は天と地ほどの差があることがデ−タで立証されている。ハスウェイト社はここでこれまでの利益を二つに区分けし、それを利点と利益とした。

「特徴」「利点」「利益」の内容

SPINでは説明のポイントを

特徴(Features)と利点(Advantages)、利益(Benefits)の3点とし、
頭文字をとってFAB(ファブ)と呼んでいる。

それぞれの内容を以下に示す。

■特徴 商品の持っている客観的事実を指す。商品の構造や性能、価格、保証内容などを言い、数値で示すことが多い。
●このパソコンのCPUは600Mhzです
●重量は2Kgです
●○○のソフトがプリインスト−ルされています
●価格は20万円です このように特徴の説明は中立的事実を述べているだけなので説得力がない。カタログに書いてある事実説明に顧客が関心を示すはずがない。特に大型商談においては、商談の初期に特徴の説明をするとマイナス要素が大きく出る。効果が少しだけあるのは、商談の中盤で相手が技術者の場合に限られる。


■利点 その商品の一般的な有用性の説明。つまり、言葉の説明が多くなる。パソコンのカタログをイメ−ジすると、最終ペ−ジのスペックが特徴で中程の箇条書きになっている部分が利点になる。 ●このパソコンは省スペ−ス設計です
●処理速度が高速なので画像処理に最適です
●画面が大型なのでとても見やすいマシンです 商談に対するインパクトは、商談の初期に強く働くが商談が進展するにつれ薄れていく。


■利益 買い手が発言した顕在ニ−ズに対し、説明する商品がいかに効果があるかの説明。説明の形は必ず買い手が発言した顕在ニ−ズを復唱した後、自分の商品・サ−ビスの有効性を説明するパタ−ンになる。
●画像処理が快適に使えるマシンが欲しいとおっしゃいましたが、このパソコンは専用チップを搭載しておりますので、お客様のご要望にピッタリです
●社員が増えてオフィスが手狭になり、お困りとのことですが、このパソコンは設置スペ−スが小さくて済みますので、御社には最適ではないでしょうか
●御社の社員の皆様はパソコンに向う時間が長く、目が疲れる方が多いとのことですが、このパソコンは画面が大型なので社員の皆さんに喜んでいただけるのではないでしょうか

そして利益の説明は商談決定に対し絶大な影響を及ぼすこととなる。SPINでは四つの質問をして買い手の潜在ニ−ズと顕在ニ−ズを語ってもらっている。そのプロセスがあるので、売り手は顧客の持っている問題点(ニ−ズ)を知っており、結果利益を語れるという図式になる。

説明を受けた顧客の反応は

特徴だけの説明を受けた顧客は、説明終了後、必ず決まった質問をする。「価格はいくらですか」「20万円です」「高いな−」というやり取りがあって、結局は商談不成立になる。つまり、特徴は中立的な客観的な事実を述べるだけなので説得力がない。 特徴と利点を説明された顧客の反応は随分良い。特に、利点の説明は面白いので強い興味を持って聞いてくれる。
そして説明終了後の顧客発言は「なるほど。説明は良く分かりました」である。 ここまでは順調だが、その後の言葉が問題。「しかし当社には当てはまりませんね」「当社ではそのシステムが必要になるのは随分先のことになるでしょう」といった回答が出ると、これも商談失敗となる。 唯一商談が進展するのは利益まで説明された場合。「なるほど。この提案はとても興味を引かれました。導入を前提でお話を進めましょう」となる。

新製品が売れない理由

読者の皆様で新製品をリリ−スしたが思うように売れなかった経験をお持ちの方は多いと思う。単純なものは売れるが、高額・複雑な新製品はなかなか売れない。その理由はFABにある。 たいがい新製品がリリ−スされる前に営業職を集めて、製品開発もしくは製品企画の方が新製品を説明する。この時の説明内容は「その製品がいかに素晴らしいか」を延々と述べるだけ。
この説明を受けた営業の皆さんも早速客先を訪問して、この新製品説明を得意げに行う。ここで重要なポイントは、製品開発から営業、営業から客先に行われる説明がすべて特徴と利点に終始している点だ。利益について全く触れていない。これでは売れるはずがない。もう一つの問題は日ごろ利益を語っているベテラン営業でさえ、いつもと違うパタ−ンで特徴を説明してしまう。 今後は、製品開発部に所属されている方も是非、SPINを学習していただきたい。

利益の説明は出来ていますか

利益の説明がいかに効果的かはご理解いただけたと思う。そこで、自社の営業担当者がどれほど利益を語っているかチェックしてみてほしい。

(1)提案書

大型・複雑型の商談になれば、提案書を顧客に提出するのは当然だが、その内容はどうだろうか。売れない営業(営業サポ−トも含む)の書いた提案書の中身を見ると、特徴と利点の羅列があって最後に「御社特別価格」で締めくくっている。その特徴・利点もカタログからの抜書きばかり。これでは売れるわけがない。提案書ではなく、製品説明書だ。

(2)訪問の際

営業の管理職の方に「部下の営業が、顧客とどんな面談をしているか見たことがありますか」と質問した場合、自信を持ってYESと答えられる方は少ない。多分10%以下ではないかと思う。同行訪問はかなりの頻度で実施しても、その訪問では自分が営業役を担当してしまい、部下は聞いているだけになってしまうからだ。だから同行も必要だが、最終提案の前には自分の前で、提案内容を説明させる模擬演習が効果的。チェックポイントは利益が語られているか、その利益説明は数値化されているかだ。 これが業績向上の近道の一つと私はおもいます。

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